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ヒムアリ [趣味]

明日からいよいよ放映ですね。
斉藤工さんも、窪田正孝さんも大好きなので、とても楽しみですv
番組公式を拝見するに、お二人ともキャラクターは原作とはちょっと違うのかな?
そのままでもよかったと思うのですが、ドラマはドラマとして楽しみたいと思います。
明日は笑点にも出るらしいのでとても楽しみですv


さて、デビュー前にヒムアリを書いたことがあるので、「続きを読む」の下に置いておきますね。
大阪に遊びにいった直後に書いたのでした。
また観覧車に乗りたいです。ってまだあるよね??MILLION DOLLARS NIGHT in OSAKA

大阪でお世話になった皆様へ


「なんだってわざわざ地元の夜景を並んでまで見たいかね?」
かれこれ20分程待たされたところで、隣で火村が溜息混じりの悪態をついた。
「まあええやんか。火村まだ乗ったことなかったんやろ?何事も経験やて」
その堪え性のなさに呆れながらも、ここで帰られては元も子もない。私は必死で彼のご機嫌をとるべく猫なで声を出した。
「乗りたいと思ったこともねえよ…だいたい、俺ら浮きまくってるじゃねえか」
火村が憮然としている原因はそこにもあった。私達の廻りは年若いカップルばかりである。
私達がどこにいるかというと-梅田の駅のすぐ近く、HEPの屋上にある観覧車乗り場にまさにあと数メーターで到着しようとしているところだ。
今夜久々にメシでも食おう、と電話してきた彼を梅田まで呼び出してメシを食わせ、軽く飲ませてからなんとかこの観覧車に乗るべく引っ張ってきたのだった。
予想を裏切らず、火村は「下らん」と相手にもしなかったのだが、私が「今度の小説のネタに観覧車内の密室殺人っていうのを使いたいんや。流石に一人で乗るのは恥かしいし」と懇願すると、散々渋った挙句に、降りた後のラーメン奢り、で手を打ってくれたのだったが-
「これじゃあよっぽど1人の方が恥かしくねえよ」周囲のカップルが時折投げかける奇異の目-中には火村の端正な横顔に秋波を送る目も多分にあったが-に辟易して、火村は不機嫌を隠さずまた溜息をついてみせた。
「だから悪かったって…ほら、もうすぐ順番やで?」今日はそこまで混雑しているわけではないのだろう、定員4名の観覧車だが、カップル1組ずつで乗せてくれているらしい。その分時間もかかるわけだが、なんとかあと数組で我々の順番が廻ってくる、とそのとき
「記念にお写真お撮りしてま~す」どこまでも明るい係りのお姉さんの声がした。
観覧車に乗る前に「思い出の写真」を撮影するサービスだ。
「まさか撮るとは言わねえよな」じろり、と睨む火村が怖くて、流石に私は「何ごとも経験やし」という言葉を飲みこんだ。確かにこれ以上周囲の奇異の目に晒される勇気を持ち合わせてもいなかったが-
そうこうしているうちに、やっと順番が廻ってきた。係りにチケットを渡し、私たちは漸く箱の中で腰を下ろすことができたのだった。前後がカップルだったので、もちろん定員は2名。並んで座るのもなんなので、私たちは狭い箱の中、向かい合わせに座った。
「いってらっしゃいませ」差別をしない笑顔を私達にもふりまいて、係りのお姉さんは扉を締めてくれたのだった。
すこし大きく揺れながらもゆっくりと私たちの乗っている箱は上昇していく。まだまだ近くにあるネオンの光も少し上から見るだけで何となく現実離れしたものに映ってくる。
火村は上下の箱を見上げたり見下ろしたりしながら、中でカップルが仲睦まじくしている様子に「世も末だね」などと悪態をついていたが、私はそれを無視して窓からどんどん遠くなる下界を見下ろしていた。
「取材はいいのかよ、センセ」まもなく頂上、というところで、思い出したかのように、下ばかり見ている私に火村は皮肉な問いを投げかけてきた。室内禁煙のせいか、声が妙に苛立っている。
「え?」すっかり眼下のイルミネーションに心を奪われていた私は、「そ、そやな」と心茲にない返事をしてしまう。
「下眺めてるだけで取材時間が終了しちまうぜ?」折角無理無理に付き合ってやってるんだからな、と続ける火村を騙してるのが心苦しくなってしまって、私はついに本当のことを言う決心をした。
「ごめん…取材って嘘や」
「…はん?」火村は一瞬、それこそ「鳩が豆鉄砲」くらったような顔をした。私は思わず笑い出しそうになるのを必死で堪えた。
「…嘘ってどういうことだ?アリス?」
「いや…昨日実はな…」火村の不機嫌な様子に説明する声も自然と小さくなる。私は手短に昨日あった出来事を話し出した。
昨日、東京から片桐さんが「所用があったから」とついでに私の家に寄ってくれた。折角来てくれたので、どこか行きましょう、と誘うと、HEPの観覧車に乗りたいと言うのだ。
「なんでまた?片桐さん、みなとみらいやお台場の方が、立派な観覧車あるやないですか」と笑って聞くと、
「あのビルの上に聳え立つ観覧車にいっぺん乗って見たかったっていうのも勿論あるんですけどね」と片桐さんは、今私以外に担当している推理小説家が、今度観覧車をつかったトリックでミステリを書こうとしている、その取材もしたいのだけれど、流石にあの大観覧車には
「一人で乗る勇気がないんですよ」と照れたように笑った。
「そんなん…ヤロー2人の方がよっぽど勇気いるやないですか」と物凄く腰が引けながら私が言うのを、
「前々からあれには乗ってみたかったし!ミステリ作家としての有栖川さんのご意見も聞きたいし、お願いしますよ~」と泣きつかれて、嫌々昨日乗りに来たのだ。
やはり今日くらい長々と並んで、しかも奇異の目で見られて、記念撮影までして乗りこんだ観覧車。始めは片桐氏に協力しよう庫内を調べたりしていたのだけど、頂上に近づくにつれて、私の目は眼下に広がるイルミネーションの世界に釘づけになってしまった。
…大阪の街がこんなに綺麗なものとは知らなかった。ごみごみとしたネオン街のネオンも、すこし曇ったような観覧車の窓から見下ろすと幻想的にさえ見える。
「綺麗やなあ…」思わず呟いて私はもっと夜景を見ようとつい立ちあがって窓の方に身体を向けた。片桐さんは
「恋人達がここにこんなに集うのもわかりますよね」と笑って、やはり美しい夜景を楽しもうとしたのか、私の背後に立った。
「そうやなあ…」相槌を打ちながら、私の頭に思い浮かんだのは…

「で?それからどうなったって?」相変わらずの不機嫌な火村の声。
「だから…火村と一緒に見たらもっと綺麗かなあて」それで騙して連れてきたのだ。どうしても、この美しい下界を火村に見せたかった。そして、火村と一緒に見たかった。
世の恋人達が分かち合う「綺麗」という気持ちを、火村とも分かち合いたかったのだ。この大阪の街が、こんなに綺麗に見える瞬間だからこそ、火村にもそれを伝えたかった。
「ごめん…怒らんといて…やり方は姑息やったかもしれんけど…」どうしても一緒に見たかったんや、と続けようとする私の言葉を火村の意外な言葉がさえぎった。
「片桐とはそのあとどうなったかって聞いてるんだ」
「へ?」驚いて顔を上げると、火村は本当に不機嫌な顔をしていた。
「どうって…片桐さん、その足で東京に戻らはったけど?」並ぶ時間が思いの外かかってしまったので、降りたとたんに彼は最終ののぞみに間に合うべく走って去った。お陰で「ミステリ作家の意見」など、伝えることすらできなかったのだが…。
「片桐の野郎…姑息な手え使いやがって…」舌打ちする火村の顔を
「なに?」と覗きこむと
「あのなあ、アリスがここに俺を連れてきた『口実』、そのまんま片桐がお前と、この密室で2人で夜景を眺めたいが為に無理無理捻くり出した『口実』だぜ?」
「はあ?」まさか、と笑う私に
「まあ、なんにもされなかったのならいいが」と火村は溜息をつきながら私の両肩に手を置いた。
「火村?」そのままゆっくりと抱き寄せられる。
「人が見る…」少し抗うと、
「みんなそれどころじゃないみたいだぜ」と火村は笑って上下の箱を顎で示した。
見ると上下とも、カップルが「重なって」いた。私はそれに赤面してしまった。
「夜景を見よう」ちょっと身体を離して、火村を窓辺に誘った。仕方なさそうに火村は私に従ってくれた。
3/4くらい、観覧車は廻っているらしい。まだ遠くの方まで大阪の、それこそ「星屑を散りばめたような」街が見える。
「夜な…飛行機で大阪に帰ってくるとき、火村が京都にいるときは、本当に綺麗やなあって思う…逆に、東京にいる火村に会いに行くのに、飛行機で行くときは、見下ろす東京の夜景が本当に綺麗やって思う…どこの夜景でも、火村がいるところの近くは俺にとって本当に綺麗な場所なんやなあ…」
ついつい普段思ってる言葉が口をついて出てしまった。
「アリス」すぐ背後に立った火村が私の耳にそっと私の名を囁いた。
「なんや」
「もう夜景はあきらめてくれ」
途端に彼のほうに体を向かされ抱きしめられた。そして熱いキス。
「そんな可愛いこという、お前が悪いんだぜ」
口唇を離すと火村はそう笑って、すぐまた口吻てきた。箱がかなり下界に下りるまで、私たちの長い長いキスは続き、結局「綺麗な夜景」を一緒に楽しめたのは一瞬だった。
あきらめた夜景の代償のキス。
「…まあ、ええか」観覧車を降り、出口に向かいながら私はその一瞬の美しい風景を思い浮かべながらそう呟いた。
「そういえば、昨日は写真、撮ったのか?」思い出したように前を歩いていた火村が振り返る。
「ああ、撮ったけど?」
「それは?」
「片桐さんが持って帰ったんやないかなあ」
火村はまたちょっと不機嫌な顔をしたが、
「まあ、いいか。…アリスとのこんなにスリリングなアバンチュールを演出してくれたお礼に、写真くらい許してやることにしよう」と意味不明なことを言うと、にやりと笑ってすばやく私の頬に口吻たのだった。

今度はどこの景色を眺めに行こう。どこでもきっと火村と一緒なら、忘れられない思い出の場所になるに違いない。

そんなことを考えていた自分の気持ちを覚られまいと、私はいつもより乱暴に
「人に見られたらどうするんや!」と火村の頭を思いきりどついたのだった。

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